Neural Network Consoleでの本格的なAI開発を検討される方はサービス資料をご覧ください
コンクリートを基本に、革新的な製品開発に取り組んでいる會澤高圧コンクリート株式会社。 Neural Network Console(以下NNC)を利用して、スランプの判定正解率99%を実現した生コン品質判定システムをどのように開発されたのかのお話を伺いました。
佐々木様:弊社では2018年より、「AICE」(AI Concrete Engineer)と呼ばれる生コンクリートの製造過程にAI技術を用いたシステム開発に取り組んでいます。 今回開発したシステムは、生コンの品質判定を行うAIモデルで「AICE」の頭脳部に相当するものになります。
藤本様:ディープラーニングを利用して、①生コンの製造工程におけるミキサ内の練り混ぜ画像データ、②練り混ぜ後にコンクリートを一時的に貯留するホッパ内の画像データ、③コンクリート練り混ぜ中のミキサの音響データの3つのデータから生コンのスランプを判定するシステムになります。
スランプとは、生コンの軟らかさや流動性の程度を示す指標を指し、値が高いほど軟らかく、低いほど硬いコンクリートだと判断できます。
藤井様:もともとは、テクノロジーを利用してイノベーションを生み出したいという社長の思いからIoTを使いコンクリート製造の自動化を行うプロジェクトが始まりました。 しかし、システムに使用するセンサーの種類が膨大でデータ収集に追われ、なかなか解析を行うフェーズに至ることができませんでした。 そこでディープラーニングを用いた画像認識の手法を知り、基礎実験を経て、スランプ値を導き出せる可能性を見出しました。
藤本様:研修がきっかけで3年ほど前からAIを学び始めたのですが、NNCは色々なツールを試しているときに知りました。 TensorFlowやKerasと同様のことをGUIで表現できることがわかり、これは開発を効率的に行えると感じ、使い始めたのがきっかけになります。 導入前は、自動で学習モデルを作成する別の開発ツールを利用していましたが、モデル作成の部分がブラックボックスとなっていたため自由にモデル作成が行えるNNCを利用するようになりました。GUI操作で簡単にモデル作成ができること、概念化されすぎず自由度の高い点がNNCを利用している理由になります。
藤本様:データを取得するまでの環境作りと取得データの選定に苦労しました。 モデル開発には大量のデータが必要ですが、コンクリートの製造1回あたり数万円の費用がかかってしまうため実際の製造現場でデータ収集を行いました。 収集を始めた当時は、データ取得が思うようにいかず撮像環境が整うのに1年ほど要しましたが、現在はアナログカメラにエンコーダという分岐部材をとりつけることでアナログカメラをネットワークカメラ化することで安定して画像データを取得できるようになりました。 ただ、撮像環境を整えただけではAIの精度は向上せず更なる試行錯誤が必要でした。
藤本様:AIで偏った学習をしないように粉塵や液はねで不明瞭になった画像を間引いて画像を厳選したり、コンクリートの動きを学習させようと連続した3枚の画像を用いたりして試行錯誤を重ねました。 また、コンクリートを製造する際の配合情報を加えることで精度が向上し、結果として、スランプ判定正解率は 規定値の定める許容差(実測値±2.5cm 以内)で 97.0%、規定値をさらに厳しくした基準(実測値±1.0cm以内)で83.6%を記録しました。 コンクリートの見え方の違いや配合情報のデータ量の偏りが判定精度に影響を与えていたことに気付いたのは大きな発見でした。
藤井様:画像認識の精度が向上する一方で、画像データに乱れが生じると著しく判定精度が低下するという課題がありました。
粉塵や水蒸気による曇り、照明不足による明度の低下など、画像データの異常を AI が判断できないためです。
AI によるスランプ判定を実用化するためには、良好な画像を得られない状況下で高精度の判定を行う必要がありますが、画像認識のみで解決することは困難でした。
そこで、画像が乱れた場合の補完技術として、ミキサで練り混ぜ中の音響からコンクリートのスランプを判定するAIの音響分類の基礎実験を実施しました。
音響分類によるスランプ判定の正解率は許容差±2.5cm 以内で94.3%、許容差±1.0cm で 81.4%を記録し、画像認識と同程度の判定精度を有していることがわかりました。
この結果から、画像データが欠落するような過酷な使用環境でもスランプ判定が安定的に行えるよう、画像と音響の双方のデータを補完的に利用する高精度のモデル開発に取り組んでいます。
佐々木様:今後はシステムの実用化に向けて、社内の工場でスランプ判定システムを実装し、品質管理の試験運用を実施予定になります。
将来的には、製造から現場に荷下ろしするまでの経時変化を予測し自動で補正することで、最適な軟らかさのコンクリートを現場へお届けできるようにしていきたいと考えています。
最終的には生コン製造の自動化を目標に掲げております。
弊社はコンクリートとテクノロジーの掛け算でイノベーションを起こす様々な取り組みに挑戦しております。
今回の開発はコンクリート×データサイエンスという取り組みの一環になり、他にもコンクリート×ロボティクスやコンクリート×バイオなどがあります。
また、弊社が最も力を入れているのはコンクリートの脱炭素化への取り組みです。
弊社独自のテクノロジーを駆使してセメント由来のCO2排出量の削減を目指して邁進しておりますので、弊社の取り組みを多くの方に知っていただけると幸いです。
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