ニューラルネットワークを洗練されたユーザーインターフェイスで効率よく設計できるツール「Neural Network Console」。
そして、ソニーが研究してきたディープラーニングの技術をオープンソース化したライブラリ「Neural Network Libraries」。
これら2つのプロジェクトの歴史やそこに込められた意義を、ディープラーニングの研究開発を続けてきたソニー開発者の小林が語ります。
ご存知のように、ディープラーニングを用いた画像認識は既に人を超える性能に達しており、音声認識やその他の領域でも次々に人を超える性能を達成しつつあります。ここまで性能が高くなると、今後実用化と普及が急速に進むことは間違いありません。至るところで当たり前のようにディープラーニングが使われる時代はもうすぐそこまで迫っていると言えます。
ソニーでは、2000年以前から機械学習の研究開発を行っており、AIシステム自身が成長する枠組み(自律発達知能 = "Autonomous Cognitive Development Intelligence")やディープラーニング(深層学習)にも早期に着手をしてきました。機械学習の結実として、1999年にはユーザーと心のつながりが生まれるペットロボット「AIBO(アイボ)」を発売しています。ディープラーニングの研究開発については、2010年から取り組んでいます
例えば画像認識技術などの開発を効率化するための開発者向けソフトウェアを開発してきました。 認識技術の開発者は、これらのソフトウェアを用いることで、より短い期間で開発を完了、もしくは同じ開発期間であればより性能の高い認識機を開発できるようになるというものです。 今回公開したNeural Network Console/ Librariesも、研究開発の成果である開発者向けソフトウェア群の一つです。Neural Network Librariesは2011年の第一世代から2度の作り直しを経て、既に第三世代ということになります。 Neural Network Consoleについても、ソニーグループ内で2015年より実際の認識機等の開発に利用しています。 とても良いものができたので世の中の方に使っていただきたい、提供する価値があるということで、2017年6月にLibrariesの公開に踏み切りました。
ソニーグループの事業は多岐に渡ります。カメラやスマートフォンなどのプロダクトからPlayStation(R)4などのゲーム機、音楽や映画などのエンターテインメントなど...。これら全てのジャンルにおいて、ディープラーニングの研究開発結果が使われます。具体的には、デジタルペーパーの手書き記号認識、ソニー不動産での不動産価格推定エンジン、Xperia Earのジェスチャ認識など、様々な用途で活用されています。2017年11月に発表した最新の「aibo(アイボ)」 ERS-1000においても、人物判定から顔トラッキング、充電台認識、一般物体認識など、鼻先の魚眼カメラを用いた画像認識でディープラーニングが用いられています。
皆さん画像認識への応用を想像されることが多いのですが、これらの事例からもお分かりいただけるように、ディープラーニングはセンサーデータ、数値データ、その他音声やテキストなど、様々なデータに適用できるものです。また、ディープラーニングはデータの認識用途だけではなく、異常検知やデータの加工、生成用途にも応用可能です。製品、サービスで直接お客様に提供する機能の開発はもちろん、工場での検査、異常検知用途など、業務を効率化するためにも広く活用することができます。
Neural Network Console/LibrariesはAI技術を支える基盤技術としての大きな役割のひとつを果たすものです。
まず、AI市場というと、自動運転・農業・製造業における自動製造など、その活用領域が注目されがちですが、実はこの市場はそういった活用領域と、様々な応用を裏で支える共通の基盤技術の二つに分けることができます。基盤技術は、例えばディープラーニングを効率的に実行するGPUやCPUといったプロセッサー、効率的に学習や認識を行うクラウド環境など、あらゆる応用領域に対して共通で用いられる技術です。
はい、我々のNeural Network Console/Librariesは、この基盤技術のうちの開発用ソフトウェアとしての役割を担うものです。ディープラーニングを用いた研究開発から、製品に搭載するといった作業を行うにあたり、とても便利に使っていただるソフトウェアです。
Neural Network Consoleは、GUIで商用レベルの認識機等の効率的な開発を可能にした、他に例のない画期的なツールになっています。開発効率を重視し、本質的な作業に集中したい方や、また初めてディープラーニングに触れる方にもお勧めできるものとなっています。一方、Neural Network Librariesは、多くのディープラーニング・ソフトウェアとほぼ同じカテゴリーに属するもので、基本的にはプログラマーを対象にしています。柔軟なプログラミングが可能ですので、じっくり研究開発に取り組みたい方にお勧めしています。
Neural Network Consoleの機能には、我々が長年ディープラーニングの研究開発を行ってきた中で培ったノウハウがたくさん盛り込まれています。これらの機能により、ディープラーニング応用技術の開発者は本質的な開発作業に集中することができます。また、初めてディープラーニングに触れるユーザーは、Neural Network Consoleを通じてディープラーニングのエッセンスをすばやく習得することができます。大学や企業においては、需要の急増するディープラーニングの人材育成にも最適です。
Neural Network Librariesの最大のメリットは、2011年から改善を続けてきた結果、洗練されているという点です。最新の研究開発に対応する機能を備えているのはもちろん、直感的にコーディングでき、学習や推論の速度もとても高速です。新しい関数モジュール(オペレーター)が簡単に追加できますし、いろいろなデバイスへの移植も考慮されたデザインになっています。これらのさまざまな特長を兼ね備えているのがNeural Network Librariesの強みだと言えます。
ディープラーニングは世界中で非常に活発な研究が行われている研究領域で、毎週のように新しい技術や応用が提案されています。使いやすさを維持しつつ、それら新しい技術や応用に広く対応できるようなツールにするために、設計には非常に気を使っています。使いやすさと様々な用途に対応するフレキシビリティーを両立しているというのはNeural Network Consoleの持つ1つの大きな特徴です。
Neural Network Librariesを開発者に使っていただき、社会の発展に貢献したいというのが最大の主旨です。ディープラーニングの応用性の広さを考えると、とてもソニーだけで全ての応用領域をカバーすることはできません。ユーザの皆さんに効率的に開発できるツールとして利用していただき、それが新しいディープラーニング応用技術の普及加速につながればと期待しています。また、ソニーはこれまでディープラーニング技術をあまり外部にアピールしてきませんでしたが、今回の公開を通じ、人材獲得やパートナー企業様との協力体制強化につなげることができればと思っています。
Neural Network Consoleについては、ユーザーの方から、コーディング不要で簡単に使える、UIが直感的で分かりやすいなど、大変多くの反響をいただいています。Neural Network Console/Librariesがきっかけでディープラーニングを始めたという方も多く、開発者一同とても嬉しく思っています。公開前の段階で社内に数百名のユーザーがいましたが、今回の公開を通じ、学生の方なども含めてより多くの皆さんに使っていただきたいと思っています。
既にディープラーニングを用いた開発に取り組まれており、もっと効率的に開発したいという方にはすぐに活用していただけるのではないかと思います。また、ディープラーニングに興味はあったけど、難しそうだと感じていた方、これからディープラーニングを本格的に使っていきたい、勉強したいという方にも是非おすすめします。
開発者プロフィール
小林由幸
1999年にソニーに入社、2003年より機械学習技術の研究開発を始め、音楽解析技術「12音解析」のコアアルゴリズム、認識技術の自動生成技術「ELT」などを開発。近年は「Neural Network Console」を中心にディープラーニング関連の技術・ソフトウェア開発を進める一方、機械学習普及促進や新しいアプリケーションの発掘にも注力。
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